レファレンスという仕事
皆さんはレファレンスという言葉をご存知でしょうか?レファレンスとは図書館では調べものを意味します。つまり、利用者から質問されたことに対しての回答を探すのがレファレンスというお仕事です。
図書館のカウンターへ持ち込まれる質問は多種多様です。何かおもしろい本はないか?という漠然とした質問から、魚の煮付けを作るにはどうしたらいいか?というような具体的なものまで様々です。
個人情報に関すること以外はたいていの質問に図書館司書は答えなくてはなりません。答えるといっても自分が知っていることを説明するのではなく、利用者が必要としている回答が載っている資料を探し出し、それを紹介するのが司書としての仕事です。
ですから、司書は何でも知っていればいいというわけではなく、知っているその情報がどの本に載っているのかまでを把握していなくてはなりません。
もちろん、全ての本に何が載っているのかを覚えておくことは不可能ですから、図書館ならではのツールを使って検索したり調べたりすることはもちろんのこと、現在はインターネットで検索して資料にたどり着くこともあります。
ただし、図書館司書が利用者からの質問に答える場合は、あくまでも活字で出版されているものを資料として提供することになりますから、インターネットで調べてわかったことも、それがどの本に載っているのかを調べ、本を紹介することになります。
インターネットは便利ですが、そこに載っている情報が正確であるとは断言できないからです。インターネットのおかげでレファレンスは解答しやすくなったということもありますが、インターネットでは解決できない質問ももちろんたくさんあります。
少し変わったレファレンス体験記
ここで一つ、私が実際に受けたことのある少し変わったレファレンスをご紹介しましょう。
ある午後、作業服を着た利用者の方が虫かごを手にカウンターへやってきました。その方はまっすぐカウンターに座っている私のところへやってくると、虫かごを開けて中から青虫を出し、その青虫が成長したら何になるのかを知りたいとおっしゃいました。
お話を聞いてみると、その青虫は利用者の方の家の庭にたくさんいて草木の世話をするたびに目にするのでなんだかかわいくなってしまい、今はとてもかわいがっているけれども、もし成長して蛾や蜂になってしまったら悲しいので今のうちに成長したら何になるのか知っておきたいとのことでした。
本当に大切そうにその方が私に見せてくださった青虫は私が子供の頃によく見たアゲハ蝶の幼虫だとすぐにわかりましたが、私は司書なのでその事実が載っている本をご紹介しなくてはなりません。
思案した結果、私は子供用の図鑑を開き、アゲハ蝶が載っているページを見て頂きました。子供用の資料ではありますが、写真を必要とする場合、図鑑はとても有効です。図鑑の写真と青虫を見比べた利用者の方はこんなにきれいな蝶になるならうんとかわいがってやろうととても喜んでお帰りになりました。
私は虫が苦手ではありませんから問題はありませんでしたが、たとえ虫が苦手であったとしても質問にはきちんと答えなくてはなりません。
私が勤めていた図書館は周囲に農地が多かったということもあり、害虫を持ち込んでこの虫の駆除のしかたを知りたいという質問を受けたり、農作物の育て方を聞かれたりということもありました。
そのほか、釣ってきた魚を持ち込んで種類が知りたい、とってきたキノコが食べられるかどうかを知りたいなど、質問は様々です。図書館はおもしろい本を紹介するだけでなく、地域の皆さんのありとあらゆる疑問への答えご用意する場所なのです。
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